● Vol.129 「ママが寝込んじゃった」
---------- 2006/08/24(Thu) 13:36
    「宿題は?時間割は?」
    「忘れ物ない?」

    『だいじょ〜ぶ!』
  
    子供たちは、家内が
    昨晩作ったお手製の
    “チェックシート”に
    ○をつけていく。

    「気をつけて、行ってらっしゃい」

    「今日も、学校
     楽しんでおいでよ!」

    『ちょっと、待って!』

    二階へ駆け上がる子供たち。

    『ママ、行ってくるよ!
     早く元気になってね!!』

    子供たちからエネルギーを
    貰ったママの小さな返事。

    「大丈夫よ、ゴメンね」

    迎えに来た友達と、
    元気に登校。

    何度も振り返る
    ランドセルの後姿。

    角を曲がるまで、
    手を振り続ける私。

    「大丈夫か?元気に登校したよ」

    「朝ご飯もしっかり、
     食べていったよ」

    ママ、ダウン。

    熱が下がらない。
    声が出ない。

    ママを気遣う子供たち。

    でも、ちゃんと、分かっている。

    一番しっかりしているのは、 
    子供たち。

    ママが病気して、初めて気付く。

    大きな‘こども’の父と母。

    小さな“おとな”の息子たち。

    子供に学ぶ毎日。

    我が子に感謝の毎日。



● Vol.128 「声変わり」
---------- 2006/08/17(Thu) 11:09
    子供たちの背が伸びた。
   
    「あ〜言えば、こう言う」

    親に意見する年頃となった。

    母親も良きライバル。

    甘く見てると、すぐ
    揚げ足をとられる。

    激しい母子のバトル。

    「う〜ん、息子が正しい!一本!」

    母親・全勝の頃は、久しい。

    男兄弟のいなかった家内は、
    息子の成長に、ちょっと困惑。

    男の子のおしっこの仕方の
    アドバイスにも悩む。

     ある日、お母さん、
    『お父さん、後は
     ヨ・ロ・シ・ク!』宣言。

    『ねぇ〜、お父さん、朝起きると
     なんで、お○ン○ンが
     大きくなってるの?!』

    『なんで、声が変わるの!?』

    母親と、ほぼ同じ目線で
    話が出来るようになった
    長男から、素朴な疑問。

    声変わりしだした
    長男のお○ン○ンにも
    もうすぐ毛が生えてくる。

    それを聞いて、ちょっと
    ショックなお母さん。

    親離れする前に、子離れ。

    実は、私が一番悩んでる。



● Vol.127 「2重被爆」
---------- 2006/08/10(Thu) 12:34
    広島・長崎と二度の被爆を
    体験された方がいる。

    90歳を迎えた二重被爆者。

    広島で閃光と爆風を体験。

    大きな火傷を負いながらも
   「家族がいる長崎へ這ってでも帰る」
    たとえ、息絶えようとも
   「一歩でも郷里へ近づいて死ぬ」

    強い執念で、長崎の地を踏んだ。

    技術者であった彼は、
    大都市・広島の惨状を
    職場に伝えるも、都市を一瞬に
    廃墟と化す原爆の事実を誰も
    信じ得なかったと言う。

    その時、2度目の閃光。

    長崎での被爆。

    左耳の聴覚を失い、白内障や
    白血病等を克服して、61回目の
    原爆の日を迎えた。

    彼の命を繋ぎ止めるものは...

    「気力で生きる」
    「この経験を後世に伝える」

    自身の使命と語られた。

    90歳にして、
    人生初のパスポート。

    国連本部で、
   「使命を果たす」ための講演。

    命がけの渡米であったと思う。

   「帰りは、白木の箱で帰る事に
    なっても行く」と告げられた。

     2度あることは、
     3度あってはならない。

     核兵器廃絶。

    『One for all,all for one.』

    そう、最後に言葉を結ばれた。

    先人の苦闘を、現代に
    生きる私達が、後世に
    繋げる義務がある。

    風化してはならない歴史が、
    ここにある。

    高き青空、入道雲、蝉の声、
    暑い太陽、白い砂浜。

    61年前のあの夏の日に。

    合掌。



● Vol.126 「くるくる・お寿司」
---------- 2006/08/03(Thu) 11:48
    子供たちが幼稚園生の頃、
    「回転寿司屋」に行った。

    子も親も“回転寿司”デビュー。

    家族向けのテーブルに
    案内され、腰を下ろす。

    次々に、眼の前を通り過ぎる
    お皿の列に、‘かぶりつき’で
    身を乗り出す我が子。

   『だめっ!そんなくっ付いちゃあ!』
    と家内の注意。

    頷くだけの子供たち、数分後には、
    さらに、眼を丸くしてかぶりつく。

    食べ物が自分の前を止め処なく、
    通過する場景に理解不能。

    注文するお父さん・お母さん。

    テレビでは、見た事のある
    回転寿司。

    若干、システムを理解していない。

    小声で、お母さんに
    アドバイスを求めるお父さん。

    横目で、隣のテーブルを
    覗き見て、システム把握。

    調子に乗って、ドンドン注文。

    廻るお皿に附いて行けず、
    取り逃がすお子ちゃま達。

    お皿タワーが出来上がる。

    ちょっと、タワーが
    邪魔なお父さん。

     自然体で右手を上げ、
    「すいませ〜ん!
     これ、下げて下さい」

    一瞬、カウンターでお寿司を
    握るお兄ちゃんの手が止まる。

    『お父さん、これ、このまま!
     帰る時にお店の人が、お皿
     数えるのよ』

    『だから、お皿に値段が
     附いていて、色が違うでしょ!』

    小声でお母さんからのアドバイス。

    「あっ?!そうなの!?
     なるほどっ〜」

    ひとつ社会勉強したお父さん。

    子供・喜ぶ回転寿司。

    リベンジ誓う・お父さん。



● Vol.125 「涙が出そう」
---------- 2006/07/27(Thu) 11:22
    その子と二人で私は、話をする。

    お母さんを診察室にお呼びする。

    重たい足取りで、少し項垂れて、
    腰掛ける。

    お腹に赤ちゃんがいる。

    子と母、そして、私の三人で、
    向き合う。

    我が子を促し、寄り添って、
    診察室を出る。

    その後、私は、その親子に
    再会する。
 
    母がいつも妊婦健診に
    附いて来て下さる。

    回を重ねる毎に、
    子が母の顔になって行く。

    付き添う毎に、母となる我が子の
    変化を受け入れ、包み込む母。

    お腹の赤ちゃんの
    おばあちゃんである母と
    母である子と
    私の三人で、
    胎児の動きに眼を細める。

    嬉しそうな子の表情。

    「あらぁ〜、お顔が見えたねぇ〜、
     誰似かねぇ〜」

    冗談言いながら、
    もっと幸せそうな母の愛。

    十代の妊娠。

    子から母への突然の告白。

    戸惑う母。

    けれど、しっかり受け止めて、
    抱きしめている母。

    母としては、まだ、幼いかも
    しれない我が子を見守る母の、
    その姿に、診察しながらも私は、
    涙が出そうになる。

    母から子へ、そして、
    母となった子から子へ。

    その絆に、嬉しくて、涙が出そう。

     赤ちゃんが選んだ
     若いお母さん。

     赤ちゃんが選んだ
     温かいおばあちゃん。



● Vol.124 「日が長くなる」
---------- 2006/07/20(Thu) 02:04
    大分、日が長くなってきた。

    ちょっと、うれしい。

    朝の5時、白んだ空が、
    周りを目覚めさせる。

    『ねぇ〜、明日お父さんの
     お仕事が終わったら、
     テニス一緒に出来る?』

    前夜、就寝前の子供が、
    独り言のように呟く。

    「いいよっ、明日雨降らな
     かったら、一緒にやろねぇ..」

    父は、頬杖付いて、
    子の背中を擦って囁く。

    子供は、眼を閉じたまま、頷く。

    診療が終わり、気付けば、
    もう午後7時前。

    冬なら、もうとっくに真っ暗。

    でも、外は、まだ明るい。

    自宅の我が子に電話。
    直ぐに声が飛び込んでくる。

    『宿題も終わったよ!
     明日の時間割もした!』

    『今から、出来る?大丈夫?
     お仕事終わったの?!?』

    「ラケット持っといで!」

    『直ぐ行く!!!』

    時間にすれば、僅か
    30分程の我が子との戯れ。

    一生懸命、ボールを追い駆ける。
    走ってボールを取りに行く。

    「上手くなったなぁあ〜」

    流れる汗も拭わず、
    満面の笑みで応える子。

    『ねぇ!明日も出来る?!』

    真っ直ぐ、私を見上げる眼差し。
 
    日が長くなった。

    すごく、嬉しい。

     お天道様に
     ありがとう。
     感謝します。



● Vol.123 「お兄ちゃんの分も」
---------- 2006/07/13(Thu) 01:30
    『先生、これ、お兄ちゃんの』

    『お兄ちゃんのも、買って来たの』

    その女の子の家には、
    たくさんのおもちゃが
    飾ってある。

    すべて、同じものが、
    色違いで2つずつある。

    女の子のお兄ちゃんは、
    小学校に上がる前に、
    病魔と闘った。

    小さな身体で、幾度と無く、
    入院し、頑張った。

    けれど、ランドセルを持つ前に、
    天国へと旅立った。

     妹は、両親から
    「お兄ちゃんは、あのお空の
     向うにいるのよ」
    「いつも、あなたを見ているのよ」
     と告げられた。

    だから、毎日、お空に向かって、
    『おはよ〜!』
    『おやすみなさい』と
    元気にご挨拶する。

    お母さん、お父さんと
    お出かけして、買い物する時、
   『これも..これ、お兄ちゃんの分』
    と、必ず、その子は、お母さんに、
    ニッコリ手渡す。

    人は、出会ったら、いつか
    別れる時が訪れる。

    色々な「別れ」が
    あるのかも知れない。

    お兄ちゃんが天国に召された時、
    お父さんもお母さんも
    妹も、お別れを告げた。

    でも、その子は、私の手を引いて、
    お兄ちゃんと自分との
    大切なたからもの達を
    見せてくれる。

    その傍らで、お母さんは、
    言葉無く、微笑む。

     お別れしても、
    「さよなら」では、
     ない気がする。

    愛する家族との別れは、
    その受け止め方は、
    ひと様々なのかも知れない。

     私を見上げ、
    『これ、お兄ちゃんの..』
     の一言に、
     私は、正直、切なくなる。

    でも、とてもいとおしく、
    胸が熱くなる。

    シアワセな気持ちが、
    何故か沸き起こる。

    たとえ、短い人生であっても、
    お兄ちゃんは、
    このお母さん・お父さんを
    選んで来た事を
    とてもシアワセであると
    思っていると感じる。

    妹がいる事も、
    とても喜んでいると思う。

    「いいねぇ〜、お兄ちゃんと
     お揃いで..」と、
     私は、その小さな手を握り返す。

    「また、来て、い〜い?」
     と尋ねると、
    『うん、いいよ〜!』
     といつも言ってくれる。

    ありがとう。
    あなたに、感謝。



● Vol.122 「歯医者さん」
---------- 2006/07/06(Thu) 18:39
    私のクリニックの隣に
    歯医者さんがある。

    いとこである。

    私は、中学生の頃まで、
    虫歯が一本も無かった。

    学校医の先生から誉められた。

    だから、胸張って、
    歯見せて笑ってた。

    隣の歯医者に遊びに行っても、
    治療で通った事なんて、
    小学生の頃、夕食のおかずの
    魚の骨が口の中に刺さって、
    取って貰った以外、記憶に無い。

    ところが、成人して時折、
    冷たいものが歯にしみる
    事があった。

    ずっ〜と、悩んだ末、
    意を決して、いとこに診て貰った。

     元来、私は、
     ちょ〜痛がり&怖がり。

    診察台に座るなり、昨日から
    決めていたセリフを一言。

    「何でも、正直に言って!
     覚悟は出来てるけん!!」

    口を開けて、眼はしっかりと
    見開いて、覗き込む彼を凝視。

    『う〜ん?!』と、彼が
     マスクの中から重た〜い発言。

    すかさず、私は身を起こし、
    よだれが垂れてもお構いなく、
   「『う〜ん?!』って、なに??
    ど・どっど〜ゆう意味???」

    彼から無言のお返事。

    『なるほど〜?う〜ん!?』と
     追撃発言。

    「ちょ・ちょっ・ちょっ〜と、
     待ってぇ〜!
    『なるほど〜?う〜ん!?』
     ってぇえ〜!?!」

    興奮のあまり、照明に頭を
    ぶつける被害者?、
    いや、患者の私。

    結局、大事には至らず、
    ちゃんと治療して貰って
    一件落着。

    その短い帰り道..。

    「患者様にもっと、もっ〜と、
     やさしくしなきゃ」と固く決意。

    治って、感謝・感謝!

    でも、最近、また痛い..。



● Vol.121 「列離れ二匹の蟻引返す」
---------- 2006/06/29(Thu) 10:59
    当然の悲報。

    こころ整理出来ぬまま、
    深夜に逢いに行った。

    頑固で、堅実で、
    真っ直ぐな人であった。

    床に臥すその顔は、
    生前の凛とした面持ちとは
    違い、とても柔らかで、
    やさしい寝顔だった。

    苦学して、学問を究め、
    医師の道を志した。

    学生時代には、剣道で
    日本一の栄冠を手にした。

    文才にも恵まれ、
    俳人としても著名。

    正に文武両道。

    卒寿を迎えた晩年に
    訪れた人生の終焉。

    ある日、突然、天高く
    旅立ってしまった。

    私は、じっと静かに
    そのお顔を覗き込む。

    戸惑い・寄り添う家族・
    親族とは、異なり、
    その安らかで、柔和な面持ちは、
    自らの最期を己一人が
    悟っていたかのようであった。

    傍らに、走り書きの最期の句。

    「列離れ二匹の蟻引返す」

    仲睦まじく寄り添い
    合っていたご夫婦。

    激動の時代を
    乗り越えて来た人生。

    私は、幾度となく、
    こころで読み返した。

    離れられなかった。

    床の間に掛かる一句が
    私を見ていた。

    「天界に虹あり 人に夢のあり」



● Vol.120 「ゴメンなさい」
---------- 2006/06/22(Thu) 00:51
    「明日の時間割は、済んだの?」
     と、就寝前にゲームに
     夢中な息子に父が一言。

     重たい腰を上げて、
     ゲーム片手に
     ランドセル・オーブン。

    次々にポンポンと、
    教科書をランドセル周りに
    集合させる。

    「ちょっと、まったぁあ〜!」
     と、お父さん。

     息子、キョトンと
     ゲームまで中断。

    「本に謝りなさい」

    「投げて、すいませんと
     言いなさ〜い!」

     息子、素直に教科書様に
    『ゴメンなさい..』

     首振る父さん、
     誠意が足りな〜い!

    『投げて、スイマセン、
     もうしません』

    子供が本を抱きしめて、
    やっと無罪放免。

    ものを無下に扱ってはいけない。

    なにものにも「命」がある。

    『大切なこと』を子供たちに
     何度も何回も語り掛ける。

     一緒に考える。

    『お父さん!ごめんなさいは?』

    「あっ、ゴメンなさい..
     もうしません..」

     時には、私自身が反省。

    いとおしく思いやる気持ちは、
    自分の周りのすべてのものに注ぐ。

     ゴメンなさい..。

     こころを言葉にして、
     身体から外へ放つ。

     言葉にして、届ける。

     何回も、何回も。

     とっても、とっ〜ても
     大切なこと!