● Vol.139 「学食」
---------- 2006/11/02(Thu) 00:06
    「あと、五分」
    
    授業終了のベルより、
    お腹の虫が先に鳴っている。

    育ち盛りの高校時代。

    ベルと同時に学生食堂へ、
    もうダッシュ!

   「おばちゃん!Aランチとうどん!」

    あっという間にたいらげて、
    ひと段落。

    食後のアイスクリームを
    友達と頬張る。

    学食のおばちゃんは、
    学校の近くに住んでいた。

    下校時に、仕事を終え、
    家路に着くおばちゃんと
    時折、出逢う。

    「おばちゃん!バイバ〜イ!
     明日も行くけん!」

    『待ってるよ〜!
     気をつけて帰りんしゃい』

    学校近くの駄菓子屋。
    友人とよく出かけた。

    そこに、おばちゃんの子供も
    よく遊びに来ていた。

    「おい!お母さんは?
     一人で来たん?」

    「お兄ちゃんがアイスクリーム
     ごちそうしちゃるけん」

    「好きなのを、選びんしゃい」

    『ありがとう!』

    子供と並んで、夕暮れ時に
    デザート・タイム。
 
    翌日、いつもの如く、  
    学食へもうダッシュ!

    金欠な私は、カレーライス
    オンリーでガマン。

    『はい!お待ちどうさま』

    「?!」

    「おばちゃん!間違ってるよ、
     うどんは頼んどらんよ」

    小さな声で、おばちゃんが一言。

    『昨日、家ン子がアイスクリーム
     ご馳走になったでしょ』

    『これは、おばちゃんのおごり!』

    正直、ラッキー!

    食べ盛りの私に、
    ノーの文字はない。

    「また、あの子にご馳走しよ〜」

    小さなハピネスと
    大きな邪心が渦巻く私。

    ありがとう、おばちゃん!

    ありがとう、僕ちゃん!



● Vol.138 「ラーメン屋のおばちゃん」
---------- 2006/10/26(Thu) 03:02
    「いらっしゃいませ〜」
    
     元気な第一声。

    「ご注文は?」
   
    「ラーメンと餃子なら、
     Aセットがお得ですよ」と、
     適切なアドバイス。

    「あらぁ〜!僕たち大きく
     なったねぇ〜!」と、
     お決まり文句。

     1週間前に来た時も
    「あらぁ〜!僕ちゃんたち
     大きくなったねぇ〜!」と、
     こども達の頭を
     ニッコリ撫でてくれた。

    おばちゃんは、
    いつも明るく・大きな声で、
    忙しく店内を動き回っている。

    おばちゃんから、
    いつも「元気」をもらう。

    幾つなんだろう?

    孫がいてもおかしくない年齢。

    ずっと、あのラーメン屋で
    働いている。

    元気に・明るく、そして、
    楽しそうに働いている人を見ると、
    こっちまでなんだか、嬉しくなる。

    「ありがとうございました〜」
    「また、お願いします」
    「僕たち、バイバ〜イ!」

    お腹一杯になって、
    幸せな気分で店を出る。

    素敵な人は、気付けば、
    自分の周りには、たくさんいる。

    ありがとう。
    感謝します。



● Vol.137 「乗り越えた赤ちゃん」
---------- 2006/10/19(Thu) 11:20
    「がんばったねぇ〜」

    「ちょっと抱っこさせて、
     もらっていい?!」

    産まれつき心臓に病気があった。
    手術を受けた。

    小さな身体で、とっても
    大きな試練を乗り越えた。

    今日は、お母さんと一緒に
    元気になった姿を
    私に見せに来てくれた。

    「一番、がんばったもんねぇ〜」

    「でも、お母さん・お父さんが
     いてくれたから、がんばれ
     たんだもんねぇ〜」

    じっと、私の腕の中で、
    私を見ている。

    何でも、分かっている。

    後日、そのお母さんから
    メールが届いた。

    『先生が我が子を抱っこして、
     お話している時、気付きました
     幾度となく入院、その度、
     泊り込みの看病..
     正直、大変でした
     でも、一番、頑張ったのは、
     この子自身なんだ
     なぁ〜って..』

    『先生、気付かさせてくれて、
     有難うございます』

    「がんばったねぇ〜」

    「大丈夫..」

     逢いに来てくれて、
     ありがとう。



● Vol.136 「友達のお母さん」
---------- 2006/10/12(Thu) 00:27
    小学生の頃、仲の良い友達がいた。

    いつも、一緒に遊んでいた。

    その子の家にも、
    よく遊びに行った。

    「こんにちは〜!!」

    『あらぁ〜、よく来たねぇ〜』
    『今、おばちゃんが梨
     剥いてあげるからね』

    「おじゃましま〜す!」

    いつも笑顔で迎えてくれた。

    お父さんは、いなかった。
    兄弟もいない。

    その子とお母さんの
    二人暮しだった。

    仲の良い親子だった。
    明るい家庭だった。

    子供の私の眼には、そう映った。

    その子も大好きだった。
    お母さんも大好きだった。

    何故か、羨ましさもあった。

    「こんにちはぁ〜!」

    『は〜い、早、上がんなさ〜い』

    いつも、ニコニコのお母さんに
    会うと、とっても嬉しかった。

    「さようなら〜、また、
     来るねぇ〜!」

    『いつでもおいで!
     気をつけて帰んなさい』

    「ハ〜イ!」

    幼い私には、それが、
    ただ、ただ、うれしい。
    訳もなく、嬉しかった。



● Vol.135 「19歳」
---------- 2006/10/05(Thu) 00:51
    派手な服装。
    はっきりとしたメイク。

    私の眼に映るのは、
    今時の19歳。

    「おめでとうございます」
     からスタートした
     若いお母さんと私との出逢い。

    健診毎に、私は、
    彼女の「人となり」を知る。

    見かけと違う19歳。

    母子家庭。
    5人弟妹の一番上、
    下の子の面倒や家事を
    ずっと手伝って来た。

    18歳で結婚。
    毎日5時に起床して、
    ご主人のお弁当作り、
    一日も休まず、今も続けている。

    『おはようございます』
    
    『ありがとうございました』

    いつも彼女が、笑顔で
    挨拶する事に気付かされた。

    「偉いねぇ〜」
     と、自然と頭が下がる。

    「いいお母さんを選んだねぇ〜」
     とお腹を触る。

    私よりお腹の中の赤ちゃんの
    方が人を見る眼がある。

    また、教えられた。
    学ばせて頂いた。



● Vol.134 「異国の地で」
---------- 2006/09/28(Thu) 01:30
    「気をつけて、行ってね」

    「心配な事は、何でも
     メールでもしてね」

    ご主人がお仕事で、海外派遣。
    数年は日本に帰らない。

    異国での出産。

    文化も習慣も違う土地で、
    大きなお腹で旅立つ。

    時折、海外から私にメールが来る。

     不安を少しでも
     安心に変えてあげたい。

   
    「こんにちは」
    「大丈夫?」

    異国(日本)でのご出産。

    ご主人も外国人だが、
    流暢に日本語を話される。

    しかし、ご本人は、
    在日間もなく、片言の会話。

    「自分がもし、言葉も良く
     分からない国でお産するん
     だったら、不安でしょ!」

    スタッフに私は、問いかける。

    『ちょ〜不安です』

    「だろ〜、だから、みんなで
     応援しよう!」と、私。

    どんなに心細く、不安でしょう。

    ご出産後に、母国から
    お母様が来日。

    お母様と対面。

    言葉は交わさない。
    お互いニッコリ笑顔のご挨拶。

    言葉ではない、こころの会話。

    【不安を安心に】

     たなべクリニックの
    「バリュー(価値)」
     のひとつ。

    今日も「バリュー」を
    こころと言葉で繰り返す。



● Vol.133 「台風!サンキュ」
---------- 2006/09/23(Sat) 12:35
    台風接近。

    週末に九州本土へ上陸の予想。

    こども達も家内も、そして、
    私もちょ〜楽しみしていた
    運動会の開催が微妙。

    天気予報と重たい空と睨めっこ。

    運動会当日、午前6時、
    中止が決定。

    こども達の成長..
    運動会は、親にとって、
    目を細める嬉しい
    イベントである。

    過去、澄み切った青空の下
    開催された運動会でさえ、
    私は、仕事の都合上、
    こども達の雄姿を記憶する事が
    出来なかった日々が多々ある。

    家族でお弁当囲んで、
    楽しく会話するこども達を
    我が眼に焼き付ける機会には、
    恵まれない。

    プログラムの途中、
    仕事の合間をぬって
    駆けつけた運動会..
    会場に到着して、5分で
    クリニックに呼び戻された
    事もあった。

    運動会は、平日に延期。
    応援には、行けない。

    プログラム握り締めて、
    小さく溜め息が洩れる。

     家内は、そんな私を
     知っている。

     こども達もそんなお父さんを
     感じている。

    台風で中止になったその日、
    仕事中の私にお母さんから電話。

    『お父さん!お昼ご飯、
     楽しみにしててね!』

    「?!」

    『お帰りなさ〜い!』

    なんと、リビングの真ん中に
    茣蓙敷いて、スタンバイの家族。

    体操服と鉢巻姿のこども達。

    『ハイ!お父さん、おしぼり』

    お茶も水筒からのサービス。

    お弁当囲んで、ランチタイム!

    赤組・青組に分かれた
    こども達の応援歌合戦。

    『早く食べて、昼からの
     プログラムが始まるわよ!』

    外は、雨・風の猛威の中、
    我家では、プログラム通りに
    進むご飯。

    『ハイ、果物』

    食後の果物もタッパから出てくる。

    一番うれしいお父さん。
    
    台風の内、我家だけは、
    秋晴れの「運動会」モード。

    ありがとう、お母さん。

    ありがとう、台風。



● Vol.132 「合宿」
---------- 2006/09/14(Thu) 14:29
    夏休み。

    子供たちにとっては、
    心も身体も大きく
    成長する時期であろう。

    真っ黒に日焼けした子供たちの
    元気よい登校が始まった。

    私も元気な子供だった。

    運動大好き。
    運動場を走り回るのが、楽しい。
    特に球技が得意だった。

    中学からサッカーを始めた。
    足も速かった。

    大会に向けての夏合宿。

    猛暑の中、先輩達からの
    熱い指導。

    連日続く、猛練習。

    『あぁ〜、氷の海で寝たい』

    『ぁあ〜、シップを身体中に
     貼って寝たい』

    走りながらの妄想。

    木陰で、ジュースを飲みながら、
    指導する先輩が憎い。

    「ラスト!一本!」の掛け声。

    力を振り絞って、
    ナイス・パス&ナイス・ゴール!

    『終わったあ〜、終了〜』と、
     思いきや、
   
    「よ〜し!ナイス・ゴール!」
    「忘れない内に、もう一本!」

    『ぇえ〜マジっ〜!
     ウソでしょ〜..』

    真っ黒に日焼けした、
    あの夏の日。

    泥だらけで、汗びっしょりの
    ユニフォーム。

    「忘れない内に、もう一本!」
     だけは、もうイヤ!

    先輩になって、指導者となっても、
    その一言だけは、言わなかった。

    練習終わって、みんなで水浴び。

    「ジュース飲む時は、隠れて飲む」
     が、暗黙のルール。



● Vol.131 「水泳大会」
---------- 2006/09/07(Thu) 01:42
    夏休み。

    私が小学校入学の頃、
    母校には、プールが無かった。

    夏の水泳の授業は、学校裏の海。

    体育は、浜辺に集合。

    今思えば、貴重な体験。
    楽しい思い出。

    数年後、学校にプールが出来た。

    みんな、おおはしゃぎ。

    杮落としに「水泳大会」が
    開催された。

    私は、選手に選ばれた。

    そこで、夏合宿。

    2学期早々に開催される
    大会に向けて、先生を始め、
    みんなで練習頑張った。

    泳ぎも上達。
    記録も伸びた。

    母校での開催。

    いよいよ、自分の出番。

    友達の声援も力強く、
    「位置について〜」
    スタート!!

    身体が軽い、水に乗る。
    好記録の感触。

    水しぶきの合間に声援の
    大きさが、聴き取れる。

    ゴールまで、あと十メートル。

    『えぇっ?!?』
    
    足の指がつった!!
    パニック!!!

    生まれて初めて、「つったぁあ」

    ブク・ぶく・ブクゥ...

    ゴール直前で、ヘルプ・ミィ!

    救助の先生が飛び込む。

     助け出されて、
    『えぇ?!なにっ!?』
    『ここは、どこ?!?
     私はだれ!?!』状態。

    新記録目前の大失態。

    ぁあ〜、あの夏の日よ..。

    もう一度、カムバッ〜ク!



● Vol.130 「母と父」
---------- 2006/08/31(Thu) 14:02
    母親・父親について考えてみる。

    自分が子供の頃、父や母を
    見上げていた頃を思い出してみる。

    個々の家庭で、両親への思いは、
    異なるのであろう。

    祖父母が居る環境や、
    兄弟・姉妹の存在も、
    子供の様々な感受性を
    育くんでいくのだろう。

    自身を振り返っても、
    やはり、父・母の存在感は違う。

    幼少の頃は、母が良き理解者。

    甘えもするが、ケンカもする。

    成長と共に、父へ
    歩み寄った記憶が残る。

    小学生の息子達にとって、
    母の存在は、大きい。

    先ずは、家内に相談。

    口論にもなるが、
    味方に附いてくれる。

    父は、優しいけど、
    ちょっと怖い。

    夏休みで、少し気の緩んだ
    子供たちは、夜更かし。

    私の玄関を開く音と共に、
    一斉に二階へダッシュ。

    一瞬の内に、寝たふり。

    「お父さんに言うわよ!」

    「お父さんに相談してみなさい!」

    の母親の一言で、背筋が伸びる。

    よく食べる。
    大きくなった。

    いつか、私も我が子を
    見上げて話す時が来るだろう。

    父と母。

    役割や存在は、違えども、
    抱きしめる思いは、いつも同じ。

    子供たちに親として、
    選んでもらった事に感謝する。

    叱っても、抱きしめる。

    抱きしめて、しっかり語らう。

    選んでくれて、ありがとう。