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たなべりょうへいの言葉

ブログ

Vol.118「ママが寝込んじゃった」


「宿題は?時間割は?」

「忘れ物ない?」

 

『だいじょ~ぶ!』

 子供たちは、家内が

 昨晩作ったお手製の

“チェックシート”に

 ○をつけていく。

 

「気をつけて、行ってらっしゃい」

 

「今日も、学校

 楽しんでおいでよ!」

 

『ちょっと、待って!』

 

 二階へ駆け上がる子供たち。

 

『ママ、行ってくるよ!

 早く元気になってね!!』

 

 子供たちからのエネルギーを

 貰ったママの小さな返事。

 

「大丈夫よ、ゴメンね」

 

 迎えに来た友達と、

 元気に登校。

 

 何度も振り返る

 ランドセルの後姿。

 

 角を曲がるまで、

 手を振り続ける私。

 

「大丈夫か?元気に登校したよ」

 

「朝ご飯もしっかり、

 食べて行ったよ」

 

 ママ、ダウン。

 

 熱が下がらない。

 声が出ない。

 

 ママを気遣う子供たち。

 

 でも、ちゃんと、分かっている。

 

 一番しっかりしているのは、

 子供たち。

 

 ママが病気して、初めて気付く。

 

 大きな‘こども’の父と母。

 

 小さな“おとな”の息子たち。

 

 子供に学ぶ毎日。

 

 我が子に感謝の毎日。

 

Vol.117「声変わり」


 子供たちの背が伸びた。

「あ~言えば、こう言う」

 

 親に意見する年頃となった。

 

 母親も良きライバル。

 

 甘く見てると、すぐ

 揚げ足をとられる。

 

 激しい母子のバトル。

 

「う~ん、息子が正しい!一本!」

 

 母親・全勝の頃は、久しい。

 

 男兄弟のいなかった家内は、

 息子の成長に、ちょっと困惑。

 

 男の子のおしっこの仕方の

 アドバイスにも悩む。

 

 ある日、お母さん、

『お父さん・後は

 ヨ・ロ・シ・ク!』宣言。

 

『ねぇ~、お父さん、朝起きると

 なんで、お○ン○ンが

 大きくなってるの?!』

 

『なんで、声が変わるの!?』

 

 母親と、ほぼ同じ目線で

 話が出来るようになった

 長男から、素朴な疑問。

 

 声変わりしだした

 長男のお○ン○ンにも

 もうすぐ毛が生えてくる。

 

 それを聞いて、ちょっと

 ショックなお母さん。

 

 親離れする前に、子離れ。

 

 実は、私が一番悩んでる。

 

Vol.116「2重被爆」


 広島・長崎と二度の被爆を

 体験された方がいる。

 

 90歳を迎えた二重被爆者。

 

 広島で閃光と爆風を体験。

 

 大きな火傷を負いながらも

「家族がいる長崎へ這ってでも帰る」

 たとえ、息絶えようとも

「一歩でも郷里へ近づいて死ぬ」

 

 強い執念で、長崎の地を踏んだ。

 

 技術者であった彼は、

 大都市・広島の惨状を

 職場に伝えるも、都市を一瞬に

 廃墟と化す原爆の事実を誰も

 信じ得なかったと言う。

 

 その時、2度目の閃光。

 

 長崎での被爆。

 

 左耳の聴覚を失い、白内障や

 白血病等を克服して、61回目の

 原爆の日を迎えた。

 

 彼の命を繋ぎ止めるものは...

 

「気力で生きる」

「この経験を後世に伝える」

 

 自身の使命を語られた。

 

 90歳にして、

 人生初のパスポート。

 

 国連本部で、

「使命を果たす」ための講演。

 

 命がけの渡米であったと思う。

 

「帰りは、白木の箱で帰る事に

 なっても行く」と告げられた。

 

 2度あることは、

 3度あってはならない。

 

 核兵器廃絶。

 

『One for all,all for one.』

 

 そう、最後に言葉を結ばれた。

 

 先人の苦闘を、現代に

 生きる私達が、後世に

 繋げる義務がある。

 

 風化してはならない歴史が、

 ここにある。

 

 高き青空、入道雲、蝉の声、

 暑い太陽、白い砂浜。

 

 61年前のあの夏の日に。

 

 合掌。

 

Vol.115「くるくる・お寿司」


 子供たちが幼稚園生の頃、

「回転寿司屋」に行った。

 

 子も親も“回転寿司”デビュー。

 

 家族向けのテーブルに

 案内され、腰を下ろす。

 

 次々に、眼の前の通り過ぎる

 お皿の列に、‘かぶりつき’で

 身を乗り出す我が子。

 

『だめっ!そんなくっ付いちゃあ!』

 と家内の注意。

 

 頷くだけの子供たち、数分後には、

 さらに、眼を丸くしてかぶりつく。

 

 食べ物が自分の前を止め処なく、

 通過する場景に理解不能。

 

 注文するお父さん・お母さん。

 

 テレビでは、見た事のある

 回転寿司。

 

 若干、システムを理解していない。

 

 小声で、お母さんに

 アドバイスを求めるお父さん。

 

 横目で、隣のテーブルを

 覗き見て、システム把握。

 

 調子に乗って、ドンドン注文。

 

 廻るお皿に附いて行けず、

 取り逃がすお子ちゃま達。

 

 お皿タワーが出来上がる。

 

 ちょっと、タワーが

 邪魔なお父さん。

 

 自然体で右手を上げ、

「すいませ~ん!

 これ、下げて下さい」

 

 一瞬、カウンターでお寿司を

 握るお兄ちゃんの手が止まる。

 

『お父さん、これ、このまま!

 帰る時にお店の人が、お皿

 数えるのよ』

 

『だから、お皿に値段が

 附いていて、色が違うでしょ!』

 

 小声でお母さんからのアドバイス。

 

「あっ?そうなの!?

 なるほどっ~」

 

 ひとつ社会勉強したお父さん。

 

 子供・喜ぶ回転寿司。

 

 リベンジ誓う・お父さん。

 

Vol.114「涙が出そう」


 その子と二人で私は、話をする。

 

 お母さんを診察室にお呼びする。

 

 重たい足取りで、少し項垂れて、

 腰掛ける。

 

 お腹に赤ちゃんがいる。

 

 子と母、そして、私の三人で、

 向き合う。

 

 我が子を促し、寄り添って、

 診察室を出る。

 

 その後、私は、その親子に

 再会する。

 母がいつも妊婦健診に

 附いて来て下さる。

 

 回を重ねる毎に、

 変化を受け入れ、包み込む母。

 

 お腹の赤ちゃんの

 おばあちゃんである母と

 母である子と

 私の三人で、

 胎児の動きに眼を細める。

 

 嬉しそうな子の表情。

 

「あらぁ~、お腹が見えたねぇ~、

 誰似かねぇ~」

 

 冗談言いながら、

 もっと幸せそうな母の愛。

 

 十代の妊娠。

 

 子から母への突然の告白。

 

 戸惑う母。

 

 けれど、しっかり受け止めて、

 抱きしめている母。

 

 母としては、まだ、幼いかも

 しれない我が子を見守る母の、

 その姿に、診察しながらも私は、

 涙が出そうになる。

 

 母から子へ、そして、

 母となった子から子へ。

 

 その絆に、嬉しくて、涙がでそう。

 

  赤ちゃんが選んだ

  若いお母さん。

 

  赤ちゃんが選んだ

  温かいおばあちゃん。