Vol.665「お父ちゃん」
休日のお昼。
あるドキュメンタリー番組の再放送を観た。
地方のうどん屋。
夫婦二人で始めた小さなお店。
やがて評判を呼び店は繁盛。
従業員を雇うまでになった。
地元で有名店に成長。
幸せな日々が流れた。
けれど悲しい出来事が訪れた。
店主であるご主人の突然の他界。
大黒柱を失った繁盛店は窮地に立たされた。
しかし奥さんは踏ん張った。
悲しみを乗り越え・夫婦で育てた大切なお店を守り続けた。
従業員と共に変わらぬ味を提供し続けた。
密着したテレビ取材。
インタビューアが尋ねた。
「ご主人が亡くなった後・お店を閉じる事なくお客様に支持され・ずっと頑張ってこれた理由は何ですか」。
『お父ちゃんに・・褒められたいから』。
しばし沈黙の後こう続けた。
『私があっちの世界に行った時お父ちゃんに褒めてもらいたくて』。
『良く頑張ったなあ~ってお父ちゃんに褒めてほしい』。
涙目でお母ちゃんは語った。
今も途切れる事のない客足。
天国でお父ちゃんが微笑んでいる。